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マイラインサービスの本音

 2001年5月実施のマイラインサービスをにらんで,各電話会社のしのぎを削る広告合戦が激化しています.しかし,料金の安さと「マイラインはウチにしろ」とだけ言うCMでは,何の事やら分からない人も多いことでしょう.そこで,裏と表からマイラインサービスを考察したいと思います.

マイラインサービスの表

 以降の情報は東京電話のマイライン説明ページを参考にしました.
http://www.service.ttnet.co.jp/tokyo_denwa/kojin/myline00.html リンク切れ

サービス詳細

 マイラインサービスには2種類存在する.

■キャリア選択サービスとしての「マイライン」

 予め通話区分に応じた電話会社(以下,キャリア)を登録しておき,通話の際に識別番号を押す手間を省くサービス.ただし,識別番号を押すことで通話ごとに任意のキャリアを選択できる.

■キャリア固定サービスとしての「マイラインプラス」

 サービス自体はマイラインと同じだが,たとえ識別番号を押したとしても登録しているキャリアしか利用できない

 なお登録できる通話区分は,《市内通話》《同一県内の市外通話》《県外への通話》《国際通話》の4種類.移動電話,公衆電話はこのサービスの対象外となる.

 「マイライン」「マイラインプラス」ともに,月々の利用料金はかからない.通話区分の電話会社の登録/変更に800円(予定)の登録料がかかる.ただし,2001年10月末までは登録料は無料.

 要約すれば,マイラインサービスとは以上のようなものです.

マイラインサービスの裏

 結局の処,マイラインサービスは“00XY”と言ったキャリアの識別番号を押す手間を省くためだけのモノです.誤解されがちですが,決して料金割引の為のサービスではありません.なんだ,大見得切っている割には大したことありませんね.

 しかしそれだけのサービスの為に,ここまで電話会社のCM攻勢が激化したことは未だかつて無かったでしょう.此はすべて,マイラインサービスによる顧客獲得が各社共通の至上命令だからです.なぜなら,ただでも「手続き」なんてモノを嫌う怠惰で愚かな一般消費者が相手なのです.その上登録変更料金がかかるとなれば,一体誰が800円も払ってわざわざ登録しているキャリアを変えようとするでしょうか.つまり,ここで一度登録されてしまえばその後は半永久的にそのキャリアを使い続けることになるだろう,と言う目論見が電話会社にはある訳です.哀しいことですが,この目論見は外れはしないでしょう.

 こういった思惑の結果が昨今のCM激化に繋がるわけですが,その中でも特に目を引くのが『最大半額』と謳う某社のテレビCMでしょう.本当に半額になるのか?と言う疑問は浮かぶと思いますが,これは本当です.但しマイラインに登録しなくても半額になります.このテレビCMは,さもマイラインに依って50%割引されるかのような誤解を視聴者に与えていますが,実際にはマイラインは全く関係有りません.このような詐欺まがいのCMは,程度の差こそ有れ他社でも同様に行われています.繰り返しますが,マイラインサービスは通話料金を割引するサービスではありません.

 しかしながら,マイラインサービスに登録する事である程度の割引を行おうとするモノもあります.確認できたもので,

などなど.もちろん,これらにもちゃんと裏があり,二つの条件が決められています.

  1. 国内通話の3区分,或いは国外通話を含めた4区分をすべて同じ一社に登録しなければならない.
  2. 「マイラインプラス」で登録しなければならない.

 条件2,はっきり言ってふざけてます.前述のように,「マイラインプラス」で登録してしまうと他のキャリアを利用することが出来なくなってしまいます.高々200円,或いは5%引きでは全く割に合いません.

マイライン対策

 過剰なCMによって安そうに,そして便利そうに見えるマイラインですが,以上述べてきましたように何の役にも立ちはしません.電話機のACR機能とどっこいどっこいです.ではどうすればいいか? 結局マイラインはどこを登録すればいいのか? 答は簡単です.−登録しない− 対策も何もありはしません.今まで通り識別番号を押して電話をかけて下さい.通話距離に応じた安価なキャリアを自分で判断して利用するのが,一番安くなります.

 

 登録手続きをしなかった場合には,自動的に全区分が「マイライン」としてNTTに登録されます.これも理不尽な話ですが,結局は今までと変わりありません.「NTTは大嫌いだ」或いは「閑だから登録してみたい」というならそれも良いでしょう.「マイライン」に登録した後でも,自分でキャリアを選び,識別番号を押して電話をかける限りはデメリットは何もありません.ただし,「マイラインプラス」にだけは絶対に申し込んではいけません.特定の電話会社を狂信なさっている方は別ですが.

マイラインの問題点

 締めとして,マイラインの問題点を三つばかり挙げててみます.一般消費者には全く興味はないでしょうが,こんな下らないサービスを考え出した頭の悪い関係者に読んで貰いたいモノです.

 まずひとつは,何と行っても登録/変更料金でしょう.市場の活性化により電話料金の改訂も頻繁に行われています.いま最も安いキャリアを登録しても,半年後にはひっくり返るかもしれません.そのたびに変更料金を徴収されていては,利用者はマイラインを利用しようと思わなくなるでしょう.電話機のACR機能なら無料ですから.

 ふたつ目は,市外通話の区分が「県内市外」と「県外市外」の2種類しかない事です.市外電話は距離に応じて六つの区分に別れており,それぞれで通話料金も変わってきます.例えば同じ県外通話であっても,近距離で有れば東京電話の方が,中距離以上ならフュージョンコミュニケーションズの方が安くなります.もっと言えば,昼間・夜間・深夜の時間帯でもまた変化する訳ですから,ただ「県内市外」と「県外市外」に分けただけでは対応し切れません.

 みっつ目は「マイラインプラス」の存在です.そもそも「〜プラス」というサービスは,偉そうな名前の癖して利用者側には全くメリットはありません.これはキャリア選択の自由を利用者から奪ってしまうモノだからです.では「〜プラス」は何の為に有るかと言えば,もちろん電話会社が得をする為です.「〜プラス」でキャリアを固定してしまい,利用者が自社しか使えないようにしてしまう,電話会社の為の「サービス」な訳です.

 これらの事から,マイラインサービスは利用者の事を全く考えられていないものだと速鳥は結論づけます.登録によって顧客を分配し,登録変更料金と「マイラインプラス」で足枷を付ける.こうして市場競争に決着を付けてしまおうとする電話会社間の最後の協定のようにも思えます.まるで戦国時代の支配者による陣取り合戦です.民衆にメリットはありません.

「自社」の為,他社と「境界線」を引いて利益を確保する.それこそが「マイ」-「ライン」の本音ではないでしょうか.

exit
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